金沢周辺の利家ゆかりの地 Vol.2

長町・寺町エリア

加賀百万石の生活史が凝縮する、長町・寺町の“暮らしの文化回廊”
武家屋敷の土塀と用水が通う長町、足軽が実際に暮らした家を復元した資料館、花街情緒のにし茶屋街、仕掛けで敵を欺く妙立寺(忍者寺)、そして前田家ゆかりの祈願・菩提寺が点在。さらに、野村家の名庭千田家庭園が伝える庭園美まで——この一帯には、武家の暮らし × 防御都市計画 × 信仰・芸能が立体的に重なっています。
本ページでは、それぞれのスポットを360°写真でめぐりながら、建築や町並みの見どころ、成立背景、所要時間とアクセスをコンパクトに解説。歩く前から街の構造と文脈がつかめ、現地では細部がもっと鮮やかに見えてきます。

長町・寺町エリアマップ

寶池山 功徳院 大蓮寺(ほうちさん くどくいん だいれんじ)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆
 体験的価値:☆☆

金沢 寶池山 功徳院 大蓮寺

大蓮寺は、石川県金沢市野町にある浄土宗の寺院で、正式には **寶池山 功徳院 大蓮寺** と称します。慶長9年(1604年)、加賀藩祖・前田利家に仕えた重臣・小塚秀正(小塚淡路守秀正)によって創建されました。山号の「寶池山」は、寺地が道路より低くなっている地形を「池」に例え、阿弥陀の教えが宝のように満ちる池に見立てたものと伝えられています。文献によれば、もともとは城中か城近くの地に建立され、その後野町に替地を拝領して現在地に移ったとされます。

創建年慶長9年(1604年)
開基小塚淡路守秀正(小塚秀正)
宗派 / 山号 / 院号浄土宗/寶池山 功徳院
正式名寶池山 功徳院 大蓮寺
現存建築本堂(再建:文化12年 1815年)、西正門、供養塔群など
文化財指定特定文化財の指定記録は明示なし
備考豪姫(ごうひめ:利家の四女、宇喜多秀家正室)ゆかりの位牌所・菩提寺として著名

🗺 住所:石川県金沢市野町2丁目1-14
🚶 アクセス
バス:城下まち金沢周遊バス・北陸鉄道路線バス「広小路」停留所下車 徒歩約2分、または「にし茶屋街」停留所より徒歩1分。

⏳ 見学の目安
境内散策:約5分
建物内拝観を含めるなら:約15分(要予約)

📍 見どころ

  • 豪姫の位牌所・菩提寺としてのゆかり:前田利家の四女・豪姫(宇喜多秀家正室)の供養を目的とし、彼女の位牌や念持仏(聖観音像)を寺宝として安置。
  • 豪姫・宇喜多秀家供養塔:境内に豪姫とその夫である宇喜多秀家の供養塔が並ぶ。
  • 西正門・豪姫レリーフ:1994年(平成6年)に西正門前に豪姫のレリーフが開眼され、翌年に360回忌法要が営まれた。
  • 茶商・堂後屋や儒者の墓:茶商「堂後屋」や朱子学者 藤田維正など、有縁者の墓碑が境内に点在。
  • 境内風景・延命地蔵尊:境内には「南無延命地蔵尊」など地蔵尊が祀られており、地蔵信仰とも深い関わりを持つ。

📌 トリビア

  • 本堂の再建と前田家の援助:現在の本堂は文化12年(1815年)に再建され、当時の大蓮寺十五世であった入誉上人が前田家から松50本の寄進を受けたと伝えられています。
  • 地形を活かした命名:寺地が通りより低く下がっている様子を「池」に見立て、「寶池山」と山号を付けたとの由来。
  • 創建地の移転:当初は城中近く(現:木ノ新保・柿木畠辺り)に建立されたが、御用地となったため野町に移転されたという記録。
  • 豪姫の運命と供養:宇喜多秀家は関ヶ原の戦で敗れて流罪となったが、豪姫は金沢に戻り、夫との絆を語り継ぐ場として大蓮寺が重視されたという伝承。1995年(豪姫の360回忌)に、豪姫・秀家の遺髪(遺骨ではなく遺髪等)が分骨され、この寺で合祀供養されました。

にし茶屋街(にしちゃやがい)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆

金沢 にし茶屋街

にし茶屋街は、金沢三茶屋街(ひがし茶屋街・主計町茶屋街・にし茶屋街)のひとつで、文政3年(1820年)に加賀藩の公許を得て成立したと伝わる花街・茶屋町地域です。規模は狭く、通りの長さはおよそ100メートル程度といわれますが、出格子を備えた伝統的茶屋建築が残り、静かで落ち着いた雰囲気が漂います。 現在、にし茶屋街には5つのお茶屋(明月・美音・はん家・浅の家・華の宿)が存在し、合計15名の芸妓さんが所属しており、三茶屋街の中で最も多いという特徴もあります。

パノラマ写真

成立年1820年(文政3年)公許
町名由来 / 構成城から見て西側に位置する花街として「にし茶屋街」と称される
建物特徴出格子・木造茶屋建築の2階建てが連なる町並み
主要施設西茶屋資料館(旧吉米楼跡)・西検番事務所(登録有形文化財)など
芸妓所属数現在も複数のお茶屋が営業し、芸妓文化が継承されている
現存状況良好、町並み・街道の風情が保たれている
備考観光客は比較的少なく、しっとりした散策向きの茶屋街

🗺 住所:石川県金沢市野町二丁目(にし茶屋街)
🚶 アクセス
片寶池山 功徳院 大蓮寺から徒歩3分 250m

⏳ 見学の目安
通りの散策:10〜20分
資料館や茶屋内部拝観も含めて:40分

📍 見どころ

  • 西茶屋資料館(旧吉米楼跡):大正期の作家・島田清次郎が過ごした茶屋「吉米楼」の跡地に造られ、茶屋内装を再現しています。
  • 西検番事務所:大正期に建てられた事務所建築で、洋風な外観が特徴。登録有形文化財にもなっています。
  • 茶屋建築の町並み:出格子、木虫籠、2階構造の風情ある町屋が続く通り。
  • 芸妓文化:夜になると三味線・太鼓などの音が聞こえる可能性もあり、茶屋街としての風情を感じられます。
  • スイーツ街としての発展:近年は甘納豆や和菓子店・カフェも多く出店し、茶屋散策とあわせて食の楽しみもあります。

📌 トリビア

  • にし茶屋街の別称「西の廓」:成立時には「西の廓(くるわ)」と呼ばれ、花街が一般社会と隔てられた構造を持っていたことが由来とされます。
  • 三茶屋街中で最多の芸妓数:先述のとおり、現存する芸妓数は三茶屋街の中で最も多いという記録があります。
  • 忍者寺(妙立寺)との近接性:にし茶屋街は忍者寺にも徒歩圏内で、観光ルートの連動が可能です。
  • 比較的静かな茶屋街:ひがし茶屋街ほど観光客の往来が激しくないため、落ち着いた散策ができます。

正久山 妙立寺(みょうりゅうじ)/通称 忍者寺

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆☆

金沢 正久山 妙立寺

金沢を訪れるなら見逃せない寺、「正久山 妙立寺」。通称「忍者寺」と呼ばれ、その名称から“忍者がいた寺”という誤解もありますが、実際には忍者とは無関係。むしろ、幕府の監視下にあった加賀藩が有事を想定し、敵を欺く“仕掛け寺院”として設計された寺院です。日蓮宗の寺院であり、加賀藩三代藩主・前田利常が、かつて城内にあった祈願所を移して建立したものが現代の構造へと発展しました。

創建年 / 移築年寛永20年(1643年)、1659年に寺町台へ移築(現在地確定)
宗派 / 山号日蓮宗/正久山
構造・特徴外観は2階建てに見えるが、内部には7層構造、23室、29の階段。落とし穴・隠し階段・抜け道・望楼(見張り台)などの仕掛け多数。
用途・役割加賀藩の祈願所として、かつては寺町寺院群における砦・出城的役割を担った可能性あり。
拝観制限内部見学は事前予約制・ガイド同行のみ。堂内撮影・録音禁止。
拝観時間 / 料金通常:9:00~16:00(3〜10月は~16:30)、年末年始・法要日休業。料金:大人1,200円/小学生800円(割引・変動あり)
住所石川県金沢市野町1-2-12
備考加賀藩・前田家の紋“剣梅鉢”を寺紋に使用。

🗺 アクセス
にし茶屋街から徒歩4分240m

⏳ 所要時間
短時間での見どころ:約30分
じっくり観光するなら:約40分

🌎ホームページ

日蓮宗/正久山 妙立寺(忍者寺)
忍者寺として知られる金沢市の妙立寺。そびえ立つ屋根、その上の望楼、武者隠しのある本堂、数多くの隠し階段、切腹の間、そして落とし穴まで様々な仕掛けのある寺です。

📍 見どころ

  • 落とし穴になる賽銭箱:賽銭箱を取ると床が抜け落ちる仕掛けがあると伝えられています。
  • 隠し階段・移動床:床板を外すと隠し階段が現れる、あるいは通路が変わる移動床など、建物内に数多くのトリックが散りばめられています。
  • 望楼・見張り台:本堂屋根の突端に見張り台(望楼)があり、遠方を見通す構造になっていたといわれています。
  • 抜け道となる井戸:金沢城への抜け道と伝える井戸が地下に設けられていたという伝承があります。
  • 複雑な階層構造:外観2階建てに見える建物が、実際には7層・23室・29階段にも及ぶ構造を隠すトリック構成。
  • 茶室の低い天井:敵が武器を振るえないよう、茶室には低めの天井設計がされているという記述があります。
  • 剣梅鉢の寺紋:前田家の家紋「剣梅鉢」が、寺の装飾や紋章として用いられており、加賀藩との関係性を示します。

📌 トリビア

  • 忍者寺の語源:「忍者」が関係していたわけではなく、その構造とトリック性が忍者屋敷を思わせる点から“忍者寺”の通称がついたものです。
  • 城下寺町群の防衛配置:寺町寺院群の構成は、城下の防衛や見張りを兼ねた寺社出城としての設計思想があったと考えられています。
  • 忍者寺の隠し拝殿:本堂には、殿様や藩主が一般参拝者に気づかれずに礼拝できる、隠し拝殿や中二階的な構造があったという伝承があります。

千手院(せんじゅいん)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆
 体験的価値:☆

金沢 千手院

千手院は、金沢の寺町寺院群に属する高野山真言宗の寺院で、加賀藩主・前田家からの信仰も厚かった“祈願所”として知られています。初代・前田利家は、能登末森の合戦の際、この寺に戦勝を祈願したと伝わり、その後、藩主家の祈願寺として位置づけられました。境内には、前田家から預けられたという十一面観音像や石仏群、参道を飾る地蔵などが見られ、静かな街並みの中にも深い歴史を感じさせる寺です。

宗派・山号高野山真言宗・長久山 千手院
所在地石川県金沢市野町3-1-26
本尊・寺宝千手観世音(千手観音)・十一面観音(前田家所蔵という伝承)・地蔵群・経筒
建立/移転の歴史天長年間(824~834年)に鶴来で創建と伝わる → 兼六坂 → 元和年間に寺町へ移転との伝承あり
役割・特色加賀藩主の祈願寺・藩主家とのゆかりを持つ寺院
拝観・公開境内および建物内を拝観可、拝観料不要(無料)
備考御朱印は原則なしとの情報あり

🗺 住所:石川県金沢市野町3-1-26
🚶 アクセス
北正久山 妙立寺から徒歩6分 450m

⏳ 見学の目安
境内散策:約15~20分
建物内部・仏像等をじっくり見るなら:30分程度

📍 見どころ

  • 十一面観音像:前田家から預けられたとされる観音像。寺の伝承とゆかりを象徴する仏像です。
  • 参道の地蔵・石仏群:参道沿いに多くの地蔵や石仏が安置され、訪れる者を迎える風情があります。
  • 経筒・寺宝:前田家からの祈願書状が納められた「経筒」が伝わるとの記録あり。鶴亀・松竹梅模様の毛彫りが精巧とされます。
  • 梅鉢紋の本堂:本堂外観に前田家家紋・梅鉢紋が見られるとの伝承。
  • 歴史の伝承:能登・末森合戦で利家が祈願したという伝承。以降、藩主家祈願の場とされた。

📌 トリビア

  • 建立伝承の多重性:天長年間の創建伝承を持つが、移転や再興を繰り返してきた歴史の中で、旧地・移転地の伝承が混在しています。
  • 祈願所としての役割:初代前田利家が戦勝祈願をしたとされ、それが由来で藩主代々が参拝する寺としての位置づけを得ました。
  • 無拝観料の寺:境内・建物拝観が無料との情報が見られます(拝観条件は現地確認推奨)。
  • 御朱印非対応との記録:寺社案内サイトでは、千手院は御朱印を常設していないとの記載があるものもあります。

月照寺(げっしょうじ)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆
 体験的価値:☆☆

金沢 月照寺

月照寺は、加賀藩主・前田利家とお松との間の長女である春桂院(幸姫)の菩提寺です。もとは三代藩主・前田利常の時代に寺地が加えられ、大きな堂宇を擁していましたが、後に六斗の大火で類焼しました。現在の建物は、再建時に前田家の屋敷の一部を移築して整えられたものです。境内には石仏の群れが目を惹き、もとは卯辰山・鶴来街道にあった観音仏を集めたものと伝わります。

創建年慶安5年(1652年)
開基前田長時(幸姫の子)
開山恵学大和尚(龍渕寺五世)
宗派曹洞宗(東光山 月照寺)
構造・特徴本堂・山門・庫裏等、移築建構が多く含まれる/石仏群を安置
変遷・火災大火で類焼、明治期再建・移築再構築あり
現存状況建物群は現存/建物内拝観は要予約・限定
文化財指定特記なし(登録や指定の明記なし)
備考石仏は卯辰山と鶴来街道由来の観音像33体ずつを安置/拝観無料(境内)

🗺 住所:石川県金沢市野町3-20-34
🚶 アクセス
北陸鉄道路線バス「沼田町」バス停から徒歩約3分。

⏳ 見学の目安
境内散策:約15〜20分
建物内部拝観を含めるなら:約30〜45分(要予約)

📍 見どころ

  • 石仏群:卯辰山と鶴来街道にあったそれぞれ33体ずつの観音仏像を集めて安置しているという伝承があります。
  • 山門:旧建築様式を一部伝えており、火災を免れた構造が残るとされます。
  • 再建本堂:前田家屋敷地の建物を移築して再建された本堂で、風格のある佇まい。
  • 春桂院(幸姫)ゆかり:幸姫を弔う菩提寺としての由緒。利家・お松の子女という点で、前田家家系との関わり深し。
  • 拝観制限:境内の散策は自由(無料)ですが、堂内拝観は原則予約制。建物の保全を重視しています。

長町武家屋敷跡(ながまち ぶけやしきあと)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆

金沢 長町武家屋敷跡

長町武家屋敷跡は、加賀藩政期に上・中級武士たちが暮らした邸宅群の跡地で、現在も石畳の路地、黄土色の土塀、大野庄用水のせせらぎなどが残され、城下町江戸期の風情を感じさせる散策スポットです。金沢駅近くの香林坊・片町からもアクセスしやすく、賑やかな市街から一歩入ると、静謐な時間の流れが実感できる場所です。散策を通じて、武家屋敷の構造、屋敷配置、城下町の道路設計(クランク路など防御意匠)などを直感的に体感できます。

パノラマ写真

成立期江戸時代 前田藩政期
主要用途加賀藩武士(上・中級家臣)の居住地
構造・特徴土塀、石畳道、狭路・クランク状路地、長屋門、庭園付き屋敷
保存・遺構路地と土塀等は良好な保存/武家屋敷のうち「野村家」等が内部公開
文化財指定伝統環境保存区域・景観地区指定
備考足軽屋敷の移築再現、老舗記念館、友禅館など周辺施設あり

🗺 住所:石川県金沢市長町
🚶 アクセス
金沢駅から北鉄バス「香林坊行」で約18分

⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約10分
じっくり観光するなら:約20分

📍 見どころ

  • 武家屋敷跡 野村家:この界隈で唯一、屋敷内部を一般公開。庭園、書院造・武家書院の造り、古木・灯籠・曲水の調和が見どころ。
  • 石畳路地と土塀の街並み:狭路やクランク状道、土塀沿いの佇まいが、防御を意図した城下町設計の痕跡を残す。
  • 大野庄用水沿い風景:屋敷の前を水路が通り、水と土壁のコントラストが趣深い佇まいを演出。
  • 足軽資料館:移築・復元された足軽の住居を展示、彼らの暮らしぶりを知る施設。
  • 金沢市老舗記念館:旧商家「中屋薬舗」を移築し、当時の商家風情と展示を体験。
  • 季節の「こも掛け」風景:冬期には土塀を雪・凍結から守るために「こも掛け」がされ、雪景色と相まって情緒ある風景に。

📌 トリビア

  • ごっぽ石:長町の家々の軒先には「ごっぽ石」と呼ばれる大きな石が置かれており、下駄に詰まった雪を落とすために用いられたという記録。
  • 名称由来:この地域名「長町」は、かつて長氏(藩士)が屋敷を構えたこと、また長い町並みだったことが由来との説あり。
  • 城下町防備の道設計:直線的に道を通さず、見通しを遮るようにクランク状に道を曲げた設計が、防御意図を持っていると考えられる。
  • ミシュランガイド紹介:野村家庭園は、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで二つ星としても紹介されたことがあるほど高評価。

前田土佐守家資料館(まえだとさのかみけしりょうかん)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆

金沢 前田土佐守家資料館

前田土佐守家資料館は、加賀藩きっての名家である 前田土佐守(とさのかみ)家 の伝来資料を保存・展示する施設です。藩祖・前田利家の次男である前田利政を家祖とし、加賀藩の重臣「加賀八家」の一つに数えられたこの家では、藩政に深く関与し、文化・書簡・調度品を多数伝えてきました。資料館は、武家文化を身近に感じさせる展示を通じて、前田家本家だけでは見えにくい重臣家の歴史と役割を浮かび上がらせる場となっています。

開館年2002年4月27日(新設)
設立主体・管理形式金沢市立施設 / 公益財団法人金沢文化振興財団運営
延床面積約1,098 m²
所蔵資料数約9,000点(うち石川県指定文化財)
主な展示内容古文書、書画、調度品、武具、家督・相続関係資料など
入館料一般 310円・団体(20人以上) 260円・65歳以上/障がい者 210円・高校生以下 無料
開館時間9:30~17:00(入館受付 ~ 16:30)
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始・展示替期間
所在地石川県金沢市片町2-10-17(長町武家屋敷跡周辺)
アクセス城下まち周遊バス・北鉄バス「香林坊」停より徒歩約5分/金沢ふらっとバス「老舗記念館」停下車すぐ
所要時間目安約30分程度(展示をゆっくり覧る場合は 45〜60分程度も想定)
備考隣接の老舗記念館と共通券制度あり

🗺 住所:石川県金沢市片町2-10-17
🚶 アクセス
長町武家屋敷跡から徒歩5分 350m

⏳ 見学の目安
展示の概要をさらっと見るなら:約15分
じっくり資料を読み込むなら:約40分程度

🌎ホームページ

前田土佐守家資料館
前田土佐守家資料館は、加賀藩祖前田利家・夫人まつの次男前田利政を家祖とし、加賀藩年寄役(他藩では家老に相当する)八家の一つである前田土佐守家に代々伝えられてきた古文書、武具、書画等の歴史的資料約9,000点(石川県指定文化財)を保存・公開す...

📍 見どころ

  • 前田土佐守家ゆかりの古文書・書状:主君・前田家との往来書簡、家督・相続資料など、幕府・藩政史を読み解く上で貴重な資料群。ただし展示はその一部(常設展示は約80点)に絞ってある場合あり。
  • 調度品・武具・家伝品:武士の暮らしを示す細やかな道具や甲冑・装具、家内装飾品などが見られる。
  • 展示構成:通り庭・日本庭園鑑賞室:建物内には通り庭を配し、入館者が風情を感じながら移動できる造り。日本庭園風の鑑賞室も併設。
  • 企画展・季節展示:年4回ほど特別展を開催。江戸時代の出版文化展示など最新企画も実施。
  • 加賀藩重臣家の視点:前田本家では見られにくい、重臣家の日常・思想・文化を補完する展示。

📌 トリビア

  • 前田土佐守家の系譜:家祖となる前田利政は、利家と正妻まつの次男として生まれ、幕末まで一家を継いだ重臣家。
  • 石川県指定文化財コレクション:所蔵資料の多くが石川県指定文化財扱い。
  • 老舗記念館との共通利用:近隣施設である金沢市老舗記念館と共通観覧券が設定されており、セットで巡るのが効率的。
  • 展示規模の感覚:TripAdvisor 利用者レビューによれば、館内はやや小規模ながら、資料を丁寧に読むと “90分以上” を要する体験との感想も。
  • 展示替えと企画性:定期的な企画展により、地域文化・出版文化・書物文化など多角的テーマが提示される。

武家屋敷跡 野村家

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆☆

概要文
 石川県金沢市、古い城下町の風情が今も残るエリアに位置する「武家屋敷跡 野村家」は、江戸時代の 加賀藩 に仕えた藩士・ 野村伝兵衛信貞 を初代とする名家の旧邸宅跡です。代々、十一代にわたり藩の奉行職を歴任してきたこの家では、屋敷構えや庭園、土塀・石畳の道に至るまで、藩政期の武家文化が色濃く感じられます。敷地内には、400 年以上の歴史を誇る庭木や、曲水を配した池泉回遊式庭園、伝来の甲冑・刀剣、格調ある襖絵などが保存されており、訪れる者を江戸期の上級武士の暮らしへと誘います。特に庭園は、海外の庭園専門誌でも日本全国第3位に選ばれ、またガイドブック『ミシュランガイド・ジャポン』でも二つ星評価を受けています。

築造年(野村家屋敷地)江戸時代 (現存建物)昭和初期に北前船主の邸宅を移築・改造(庭園は江戸時代からの部材や手法を引き継ぐ)
築造者野村伝兵衛信貞(加賀藩士)
構造・特徴数寄屋風茶室、曲水を配した日本庭園、土塀・石畳の武家屋敷町並み
改修・復元歴明治以降武家制度の解体により屋敷の一部が取壊され、昭和初期に北前船主の邸宅を移築し現在の建物に。
現存状況現在一般公開されており、屋敷・庭園ともに見学可能です。
消滅・損壊屋敷の本館の一部は明治期に取壊され敷地も縮小。
文化財指定建物(旧野村家住宅)は国登録有形文化財に登録(庭園は指定外だが、海外誌などで高く評価されている)。
備考庭園評価:2003年「Journal of Japanese Gardening」日本庭園ランキング第3位。

🗺 住所:石川県金沢市長町 1丁目3-32
🚶 アクセス
長町武家屋敷跡から2分220m。

⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約30〜40分
じっくり観光するなら:約1〜1.5時間

🌎ホームページ

武家屋敷跡 野村家 ~加賀藩千二百石~ | 公式サイト
金沢市長町武家屋敷跡界隈にて、建物・庭園を一般公開しています。

📍 見どころ

  • 日本庭園(曲水・石橋・古木):敷地内には「曲水」と呼ばれる水流が濡れ縁際まで迫る造り。樹齢約400年の古木や印象的な大雪見灯籠も配置され、庭園美の頂点と言えます。
  • 上段の間・襖絵・刀剣・甲冑展示:藩主を招くための格式高い「上段の間」には藩主御用絵師による襖絵が残り、屋敷内には武具も展示。武士の暮らしと格式を肌で感じることができます。
  • 季節限定の楽しみ方:雪吊り・こも掛けの冬景色、春の桜、新緑、紅葉に彩られた庭園は写真映えも抜群。特に冬の土塀と雪のコントラストは金沢ならではの風情。

📌 トリビア

  • 意外な歴史的背景:この屋敷跡地は元々約1,000坪(約3,300 ㎡)あったとされますが、明治期の武家制度解体後に敷地の大部分が分割・転用され、現在の庭園と建物はその一部です。
  • 知る人ぞ知る情報:敷地内にある茶室「不莫庵」(ふばくあん)は、桐板の天井に神代杉の一枚板を使い、茶席として極めて贅を尽くした仕様です。
  • 著名人との関係:初代・野村伝兵衛信貞は、戦国時代の名将 前田利家 にも仕えた家系で、加賀藩における藩士として上級の地位を有していました。

千田家庭園

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆
 視覚的魅力:☆☆☆
 体験的価値:☆☆

概要文
 石川県金沢市の城下町情緒が残る 長町武家屋敷跡(ながまちぶけやしきあと)エリアに位置する「千田家庭園」は、旧〈千田家〉(旧加賀藩の武士家系)により明治27年(1894年)に造られた、池泉回遊式庭園です。 庭園の中心には静かな池が広がり、脇を流れる用水=大野庄用水から水を引き込み、築山や石橋、石灯籠が配された構成。雪見灯籠や赤戸室石(あかとむろいし)を用いた石橋など、近隣の名園 兼六園 の趣を感じさせる設えも多くみられます。2025年4月より一般公開され、かつて非公開であったこの庭園を現在では見学できるようになりました。藩士の邸宅跡を活用したこの空間では、武家屋敷の佇まいや流れる水音、庭の四季の変化をゆったり享受できます。

築造年明治27年(1894年)
築造者旧加賀藩士 千田登文(せんだ のりふみ)
構造・特徴池泉回遊式庭園。用水を引き込み、築山・石橋・雪見灯籠・ツツジ類が配される。
改修・復元歴明治中期から大正期にかけて整備され、それ以降はほぼ現在の形状と一致。
現存状況現存し、一般公開されています。
消滅・損壊特段の消滅・損壊の報告なし。
文化財指定金沢市指定史跡及び名勝「千田家庭園」。
備考2025年4月から一般公開されており、資料館も併設。

🗺 住所:石川県金沢市長町1丁目4-22
🚶 アクセス
武家屋敷跡 野村家から目の前。

⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約20〜30分
じっくり観光するなら:約1時間

🌎ホームページ

sendake-garden.com – 金沢市指定文化財「千田家庭園」は明治時代に旧加賀藩士千田登文により長町武家屋敷跡の大野庄用水沿いに造られ、金沢武家文化や時代背景を反映した貴重な庭園です。戊辰戦争や西南戦争で功績を上げた千田登文に関する資料やゆかりの品も展示しています。

📍 見どころ

  • 池泉と築山の回遊路:池を中心にして水が築山の周囲を巡る構成。水の流れと石橋・景石の組み合わせが静けさを演出。
  • 雪見灯籠・赤戸室石の石橋:池畔に雪見灯籠、赤戸室石を用いた石橋が、名園の趣を感じさせる仕掛け。
  • 季節限定の楽しみ方:ツツジ・サツキが池のまわりを彩る春〜初夏、新緑や紅葉、冬の凛とした空気も魅力。

📌 トリビア

  • 意外な歴史的背景:庭園は用水(大野庄用水)を巧みに取り入れ、武家屋敷地の水流をそのまま庭の要素として活用した、長町地区では初期の例です。
  • 知る人ぞ知る情報:「水琴窟(すいきんくつ)」や「ししおどし」が設えられ、耳でも庭を楽しめる趣向あり。
  • 著名人との関係:千田登文は旧加賀藩士で、幕末・明治期の動乱期に活躍した人物。庭園と邸宅を通じてその時代を体感できます。

金沢市足軽資料館(かなざわし あしがるしりょうかん)

⭐おすすめ度
 歴史的価値:☆☆
 視覚的魅力:☆☆
 体験的価値:☆☆☆

金沢 金沢市足軽資料館

金沢市足軽資料館は、長町武家屋敷跡界隈に位置する文化施設で、藩政時代の下級武士・足軽の暮らしと日常を伝える展示施設です。1997年(平成9年)11月に開館。金沢市内にあった高西家と 清水家 の足軽屋敷2棟を移築・復元しており、内部には足軽家族の生活空間(茶の間、台所、寝室など)や、足軽の職務・収入・暮らしぶりに関する資料が展示されています。

開館年1997年11月(平成9年)
所在地石川県金沢市長町1丁目9-3
開館時間9:30〜17:00(入館受付は16:30まで)
休館日無休(年中無休)
入館料無料
構造・特徴木造平屋建ての足軽屋敷2棟(高西家・清水家)を移築、石置き板葺屋根、昔ながらの生活空間の復元展示
展示内容足軽の日常生活用品・調度品・パネル解説、藩政期の足軽の仕事・収支・家族生活など
備考長町武家屋敷跡の散策ルートに含めやすいロケーション。近隣に市営観光駐車場あり。

🗺 住所:石川県金沢市長町1丁目9-3
🚶 アクセス
千田家庭園から徒歩3分250m

⏳ 見学の目安
さっと回るなら:約15分
展示をじっくり読むなら:約30分程度

📍 見どころ

  • 高西家・清水家 屋敷:移築再現された屋敷2棟。屋根には石が置かれた板葺き様式で、建物構成も昔を再現。
  • 足軽の生活展示:調度品・道具・箱膳、当時の家族構成・日々の暮らしぶりを再現。
  • 解説パネル・展示資料:足軽の収入・支出・任務や家族構成など制度的背景を説明する展示も充実。
  • 生垣・植木・庭構成:屋敷の周囲には生垣、内側に植木が配され、かつての住まいの様子を表現。
  • ロケーションとの結びつき:長町武家屋敷跡散策ルートの一角にあり、周辺の武家住宅との対比で楽しめる。

📌 トリビア

  • 無料公開:入館料無料で運営されており、観光客だけでなく地域住民にも開かれている施設。
  • 加賀藩の足軽政策:通常の藩では足軽を長屋に住まわせるケースが多いが、加賀藩では一戸建て住宅を与える制度があったという記録があり、本施設の屋敷構造はそれを反映しているとされる。
  • 展示説明の丁寧さ:無料施設ながら、説明板や展示解説が詳細で、当時の制度的背景まで読み解く観点が提供されていると好評。
  • 開館年の背景:1997年に開館した際、長町武家屋敷周辺の武家文化保存の一環として整備された。

次ページ

前ページ

前田利家ゆかりの地 インデックスページに戻る

comment