見るだけの歴史から、体感する歴史へ。
藩政の心臓部「二の丸広場」、金沢城の原点「金沢御堂跡」、本丸と二の丸を結ぶ象徴「極楽橋」、そして内部見学が楽しい菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓、現存する重要文化財三十間長屋。本ページでは、これらを360度パノラマで一気に巡り、規模感・導線・意匠のディテールまで没入的に味わえます。
二の丸中枢
二の丸広場(にのまるひろば)
⭐おすすめ度
歴史的価値:☆
視覚的魅力:☆
体験的価値:☆

金沢城の中枢をなす「二の丸広場」は、江戸時代には藩主の居館「二の丸御殿」が建てられていた場所です。 宝暦9年(1759年)の「宝暦の大火」で本丸御殿が焼失したのち、藩主の居所と政庁機能はこの二の丸に移され、以後、加賀藩の政治の中心として栄えました。 現在の広場は整備が進められ、石垣や基壇の形状を保全しつつ、往時の御殿の規模と構成を体感できる芝生の空間として一般公開されています。
当時の二の丸御殿は南北約90m、東西約70mに及ぶ壮大な規模で、藩主の執務室・謁見の間・上段の間などが連なり、江戸の大名御殿の典型とされました。 敷地内には御殿の礎石跡や庭園遺構も確認されており、発掘調査で出土した瓦や金箔瓦は、前田家の威光を象徴する遺物として展示されています。
パノラマ写真
| 築造年 | 天正11年(1583年)以降、前田利家による金沢城築城時に造成 |
|---|---|
| 築造者 | 前田利家(加賀藩初代藩主) |
| 構造・特徴 | 高台上の平坦地に御殿・庭園を配置/周囲は石垣で囲まれ、本丸・三の丸と接続 |
| 改修・復元歴 | 宝暦9年(1759年)焼失 → 江戸後期に一部再建 → 明治期に陸軍用地化 → 平成期に発掘・整備 |
| 現存状況 | 御殿建築は現存せず/敷地・石垣・園地として公開 |
| 文化財指定 | 国指定史跡「金沢城跡」の一部 |
| 備考 | 藩主の居所・政庁として最も格式が高い曲輪/現在は金沢城公園の中心広場 |
🗺 住所:石川県金沢市丸の内1−1(金沢城公園内)
🚶 アクセス
前のスポット「旧第六旅団司令部」から徒歩約1分(約100m)。
⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約5分
じっくり観光するなら:約15分
📍 見どころ
- 御殿跡の礎石群:往時の建物配置を示す礎石が芝生上に並び、御殿の規模を実感できる。
- 金沢城中心の眺望:本丸園地や三の丸方面を見渡せ、城全体の構造がわかりやすい。
- 極楽橋との調和:橋を渡る藩主の導線と御殿エリアの関係が、歴史的景観として復元されている。
- 春の桜と芝生:二の丸周囲の桜並木と整った芝生が、春の憩いの風景を演出。
📌 トリビア
- 「二の丸御殿」は金沢藩の心臓部:宝暦の大火以後、藩主の政務・対面・儀礼すべてがこの地で行われた。
- 発掘成果:金箔瓦や陶磁片、庭園遺構が多数出土し、江戸後期の豪壮な御殿文化を物語る。
- 藩主行列の舞台:橋爪門から二の丸御殿までの導線は、藩主登城の格式高い参道として設計された。
- 現代の憩いの広場:現在はイベントや史跡散策の拠点として市民にも親しまれている。
金沢御堂跡(かなざわみどうあと)
⭐おすすめ度
歴史的価値:☆☆
視覚的魅力:☆
体験的価値:☆

「金沢御堂」は、もともと浄土真宗(もしくはその系統)に属する寺院・宗教施設で、天文15年(1546年)に創建されました。 この寺院を拠点とした 加賀一向一揆 が、加賀地域で勢力を持っていたこともあり、実質的に宗教都市・拠点としての性格を帯びていました。 天正8年(1580年)、 柴田勝家 がこの地を攻略し、続いて 佐久間盛政 が居城とし、これを機に寺院跡地に城郭が築かれ、がちに武家の居城「金沢城」へと発展していきました。 現在、「金沢御堂跡」として残るのは、主に地形・遺構・説明板などが中心で、かつての建築物は現存していません。しかし城を巡る際にこの“城の成り立ちの起点”を訪れることで、寺院から城へ、宗教から武家支配へという歴史の転換を肌で感じることができます。
| 創建年 | 天文15年(1546年) |
|---|---|
| 位置・築造者 | 浄土真宗 門徒衆/加賀一向一揆の拠点 |
| 構造・特徴 | 寺院・御坊形式。堀・土塁・柵を備えた城塞的施設としての性格を併せ持っていた。 |
| 転換・城化 | 天正8年(1580年)に柴田勝家が攻略 → 佐久間盛政が金沢城整備を開始。 |
| 現存状況 | 寺院建築は消失。跡地・説明板・地形遺構等として公開。 |
| 文化財指定 | 所在する「金沢城跡」は国指定史跡。 |
| 備考 | 「金沢城の原点」とされる寺院跡。城の縄張り・石垣整備の出発点でもある。 |
🗺 住所:石川県金沢市丸の内1-1(金沢城公園 内)
🚶 アクセス
城内「二の丸広場」から徒歩1分60m。城址散策マップに「金沢御堂跡」の表示があります。
⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約 2分
じっくり観光するなら:約 10分
📍 見どころ
- 寺院から城へ変貌した地点:寺院〈金沢御堂〉が城〈金沢城〉へと変わる歴史的転換の地として位置付けられています。
- 地形・土塁・堀跡の残存:寺院当時の防備的構造(堀・土塁)がそのまま初期の城郭構築に利用されたとされています。
- 石垣の下地になる場所:その後整備された石垣・城郭構造の前段階として、寺院跡地の地盤が活用された背景があります。
- 解説板による歴史学習ポイント:訪問時には説明板・案内表示が設置されており、城の起源を理解するうえで役立ちます。
📌 トリビア
- 「御堂」と「城」の融合:「金沢御堂」は宗教的施設ながら、堀・土塁などの防備構造も備え、城に移行する橋渡しのような存在。
- 前田利家入封の前夜:この寺院跡地を佐久間盛政が居城としたことで、前田利家入封・金沢城築造への流れが始まったとも言われています。
- 遺構が薄く見える理由:寺院建築が長らくそのまま城に転用されたため「跡地」という形でしか残っておらず、訪問には想像力が問われます。
極楽橋(ごくらくばし)
⭐おすすめ度
歴史的価値:☆☆
視覚的魅力:☆☆
体験的価値:☆☆

金沢城公園の内堀に架かる「極楽橋(ごくらくばし)」は、かつて藩主の居所であった「二の丸」と「本丸」とをつなぐ重要な橋でした。名前に“極楽”と冠されているのは、城主の空間である本丸へと続く、最も神聖で静謐な導線であったことに由来します。 現在の橋は、平成27年(2015年)に史実に基づいて復元された木橋で、長さ約20.7m、幅約3.9m。堀と石垣の間に美しい弧を描く姿は、往時の優美さを現代に伝えています。
極楽橋は、藩主・前田利家の時代から続く金沢城の象徴的な橋で、藩主が本丸御殿に登城する際に通る「公儀の橋」として格式が定められていました。 宝暦9年(1759年)の火災後には一時失われましたが、平成の復元整備で往時の姿を再現。欄干や高欄金具には、伝統工法である「鎹(かすがい)」や「鏡板留め」などの細工が再現され、木造橋梁としても高い完成度を誇ります。
パノラマ写真
| 築造年 | 江戸初期(17世紀前半)/平成27年(2015年)に復元 |
|---|---|
| 築造者 | 加賀藩 前田家(復元:石川県金沢城整備事業) |
| 構造・特徴 | 木造桁橋(長さ約20.7m、幅約3.9m)/檜・欅など国産材使用/石垣間に架かる単径間構造 |
| 改修・復元歴 | 宝暦の大火後に焼失 → 長らく不在 → 平成27年に史料・発掘成果を基に復元 |
| 現存状況 | 復元橋として現存・通行可能(歩行者専用) |
| 文化財指定 | 建造物個別指定なし(城跡は国指定史跡) |
| 備考 | 二の丸と本丸を結ぶ藩主専用橋。橋下の堀は深さ約10mの内堀。 |
🗺 住所:石川県金沢市丸の内1−1(金沢城公園内 本丸南側)
🚶 アクセス
前のスポット「金沢御堂跡」から徒歩約1分(約0.4km)。
⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約5分
じっくり観光するなら:約10分
📍 見どころ
- 優美な木造アーチ:堀と石垣をまたぐ流麗な曲線美。写真撮影にも最適。
- 伝統技法による復元:継ぎ手や金具に至るまで当時の工法を忠実に再現。
- 藩主の導線:藩主が政務を執った二の丸と居住の本丸を結ぶ象徴的な橋。
- 夜間ライトアップ:堀水面に映る橋影が幻想的で、夜の撮影スポットとして人気。
- 四季の風景:春は桜、秋は紅葉、冬は雪に包まれる姿が特に美しい。
📌 トリビア
- 名前の由来:「極楽」は仏教用語で、“静寂と安らぎ”を象徴。藩主の空間へ至る“清らかな橋”として命名された。
- 橋脚のない設計:堀に橋脚を立てない単径間構造で、水面を遮らない設計は江戸期の技術的見どころ。
- 史料に基づく精密復元:江戸時代の絵図・古写真・発掘遺構に基づいて復元設計。
- 本丸と二の丸の関係性:この橋を渡る行為自体が“権威の象徴”であり、一般藩士の通行は禁止されていた。
菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓(ひしやぐら・ごじっけんながや・はしづめもんつづきやぐら)
⭐おすすめ度
歴史的価値:☆☆☆
視覚的魅力:☆☆☆
体験的価値:☆☆☆


金沢城の象徴的な構造物群「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」は、 3棟が一体構成 された城郭建築群です。平成13年(2001年)に、史料と発掘成果をもとに復元されました。石川門・三十間長屋と並ぶ、現存復元建造物の中でも極めて注目される施設群です。 この一体建築は、三層三階の菱櫓 と 二層二階の五十間長屋、そして 三層三階の橋爪門続櫓 を直結しており、戦時には二ノ丸を守護する防衛ラインとしての役割を担っていました。
中に入り木造で出来た様子が見学できます。
パノラマ写真
| 復元完成年 | 平成13年(2001年) |
|---|---|
| 構造概要 | 菱櫓・橋爪門続櫓:木造3層3階/五十間長屋:木造2層2階 |
| 用途・機能 | 菱櫓/見張り・防衛拠点、五十間長屋/武器倉庫・城壁機能、橋爪門続櫓/物見・橋爪門前監視 |
| 特徴 | 格子窓・石落とし・鉄砲狭間、白漆喰壁・海鼠壁、鉛瓦など防火構造 |
| 入館時間・料金 | 9:00〜16:30(最終入館16:00)/大人320円・小人100円(65歳以上証明で無料) |
| 現存状況 | 復元建築として公開・入館可能 |
🗺 住所:石川県金沢市丸の内1−1(金沢城公園内)
🚶 アクセス
極楽橋から建物の入り口まで徒歩2分 約120m
⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約15分
じっくり観光するなら:約40分(内部展示・模型・構造観察含めて)
📍 見どころ
- 菱櫓の平面形状と構造:菱形(ひし形)の平面を持つ稀有な櫓。柱も菱形断面で、内部に大径の通し柱が配されている構造。
- 五十間長屋の木組み観察:梁・桁が露出し、伝統的な木造軸組工法・仕口・継ぎ手の技法が近くで見られる。
- 橋爪門続櫓からの眺望:二ノ丸大手門・橋爪門枡形方向を見張る位置に設けられている物見櫓。
- 防御設備の意匠:格子窓・鉄砲狭間・石落としなどが配され、戦時防備を意図した造り。
- 白壁・海鼠壁・鉛瓦仕上げ:外観に施された防火・装飾要素としての伝統意匠。
📌 トリビア
- 三度の火災と再建:1759年(宝暦9年)、1808年(文化5年)、1881年(明治14年)と三度焼失を経験し、そのたびに建て替えられてきた建築群。
- 入口位置の変更:2022年9月14日から、入口がこれまでの菱櫓側から五十間長屋側に変更されています。
- 順路の一体体験:菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓は内部が通路でつながっており、建物間を移動しながら構造を体感できる。
- 建築規模の最上級復元:復元事業は明治以降の木造城郭建築復元では国内最大級規模とされ、3年4ヶ月の工期を要した大事業。
三十間長屋(さんじっけんながや)
⭐おすすめ度
歴史的価値:☆☆☆
視覚的魅力:☆☆
体験的価値:☆☆

現存する三十間長屋は、江戸末期(安政5〜万延元、1858–1860)に再建された二重二階の多聞櫓です。先行する長屋は宝暦の大火(1759)で焼失し、約100年後に復興しました。規模は長さ26.5間(約48m)・幅3間で、南面入母屋/北面切妻・鉛瓦葺という金沢城特有の意匠を備えます。1957年6月18日に国の重要文化財に指定。藩政期には武具・火薬の倉庫として機能しました。
厚い漆喰壁と鉛瓦を用いた防火構造、石垣上にまっすぐ伸びる白壁の姿は非常に美しく、金沢城を象徴する景観の一つです。内部は非公開ですが、構造調査によると柱間ごとに間仕切りがなく、火薬や弾薬を安全に保管するための工夫が随所に見られます。
見学:通常は外観のみ(内部は非公開)。ただし特別公開として、例年4〜11月の土日・行楽期に9:30–15:30で内部公開を実施(年度により変更あり)。
パノラマ写真
| 築造年 | 江戸末期(安政5〜万延元、1858–1860)再建 |
|---|---|
| 築造者 | 加賀藩 前田家 |
| 構造・特徴 | 二階建・入母屋造・鉛瓦葺/延長約54m/土蔵造の防火建築 |
| 改修・復元歴 | 江戸後期に修繕/明治期以降は陸軍倉庫として使用/昭和・平成期に保存修理 |
| 現存状況 | 現存 |
| 文化財指定 | 国指定重要文化財(1950年指定) |
| 備考 | 金沢城に現存する3棟の江戸期建造物の一つ(他:石川門・鶴丸倉庫) |
🗺 住所:石川県金沢市丸の内1−1(金沢城公園内)
🚶 アクセス
「五十間長屋」から徒歩約3分(約180m)。
⏳ 見学の目安
短時間での見どころ:約 5分(外観見学)
じっくり観光するなら:約 20分(内部観覧)
📍 見どころ
- 直線的な白壁の美:石垣上に伸びる白壁と鉛瓦のコントラストが、金沢城特有の静謐な美を生む。
- 防火建築の粋:厚い土壁と鉛瓦葺の屋根で火薬庫を守った高度な防火技術。
- 建築の均整美:等間隔の柱と小窓の配置が生み出すリズム感は、和のモダニズムを思わせる。
- 文化財建築群との調和:隣接する石川門・鶴丸倉庫とともに江戸の雰囲気を今に伝える。
- 夜間ライトアップ:夜は白壁が照らされ、黒瓦との陰影が幻想的な風景をつくる。
📌 トリビア
- 名前の由来:「三十間(約54m)」という長さから。実測ではおよそ29.5間(約53.6m)。
- 奇跡的な生き残り:宝暦の大火でも焼失を免れ、江戸期の姿を現在に伝える数少ない建築。
- 用途の変遷:藩政期は火薬庫→明治以降は陸軍倉庫→戦後は史跡保存対象へ。
- 内部構造:内部は一室構造で、梁・柱が規則正しく並ぶ壮観な空間。特別公開時のみ見学可能。


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